毎年多くの参加者が本研究合宿で初めての学外発表を行っていることを受け、VIP合宿でのポスターセッションを有意義に過ごしていただくためのコツをまとめてみました。今回初めてポスター発表を行う方も、初めてではないけれどVIP合宿の雰囲気を知りたいという方もぜひ参考にしてみてください。(VIP2012ウェブサイトを加筆修正)
ポスターセッションとは、簡単に言うと研究の内容をまとめたポスターの前で発表者が説明を行う発表形式です。
聴衆全員が一つの発表を聞くスライド形式での発表と違い、同じ部屋で複数人が同時に発表を行い聴衆は自由に興味のあるテーマの発表を聞きに行きます。今年のVIP合宿では、1セッション45分で6人が同時に発表します。
スライド形式での発表との大きな違い・メリットとしては、
ことが挙げられます。
では、ポスターセッションを有意義にするためのポイントを解説していきます。
ポスター発表も基本的なところはスライドを用いた発表と変わりませんが、ポスターならではの注意点がいくつかありますので1つずつ紹介していきます。
ポスターを作成していると、A0の大きな紙面であっても研究の全てを掲載するにはとてもスペースが足りないと感じるのではないでしょうか?
しかし、だからといって文字を小さくして全ての情報を掲載することは得策であるとはいえません。なぜなら、一度に聴衆がたくさん集まった場合は全ての人が近くからポスターを見ることができるとは限りません。また、文字量が多いと読み手が読む気をなくしてしまい、結果として発表自体に興味を持てなくなってしまいます。
また、詳しくは後述しますが1回の口頭発表に割ける時間が短いため、どんなにポスターに内容を詰め込んでもその全てを口頭で発表できるわけではありません。
今回の発表で自分が一番言いたいことは何か、よく考えた上で簡潔にまとめるのがポスター制作でのポイントといえます。どうしても紙面が足りない!という場合は、ポスターに全てを詰め込むのではなく別紙で補足資料を準備しておき、興味を持ってくれた方にのみ説明をすることをおすすめします。
普段研究を行っていると、自分の研究について振り返ってデータをまとめたり、人に見せるための図やデモビデオを作ったりという場面はそれほど多くないのではないでしょうか?特にビジョン関係の研究というのはプログラムを実行すると結果が目に見えて明らかにわかるものが多いため、データの集計など「最後にやったのはいつだろう?」という人も少なくないと思います。
ですが、自分の研究を発表する上でこれらのデータはとても重要です。実際に発表していると「実行結果の画像はないの?」であったり「計算時間はどれくらいなの?」といった質問を受けることは決して少なくありません。ですから、こういったデータはしっかりとまとめて自分の研究の結果が「数字」や「画像」でしっかりと伝わるように心がけましょう。
発表をするとき、結果が出ていない部分や自分でもよくわかっていない部分を出すのはちょっと抵抗があります。ですが,ポスターにまとめる際こういった内容が全くあってはいけないというわけではありません。その証拠に、多くのポスターには今後の課題という項目があります。
ポスター発表の良いところは興味を持ってくれた人とその場で議論ができるところにあります。ですから、自分の抱えている課題や今後の展望などを簡単に書き留めておくことで思わぬアドバイスが得られることもあります。特に本研究合宿は「研究が未完成でも歓迎」と広言していますので、研究があまり進んでいない人も逆にアドバイスをもらいに行く気持ちで臨むと良いかもしれません。
さて、作成時の注意について触れたところで次はいよいよ発表時のポイントです。1セッション10分など短い発表時間の口頭発表と違い、45分(本研究合宿の例)など長めの発表時間が設定されているポスター発表では発表のやり方も少し違ってきます。それでは実際にポイントを見ていきましょう。
45分のセッションで同時に3〜6人が発表しているポスターセッション(本研究合宿の場合)では、聴衆が他の人の発表も十分に見に行けるように1回の発表は5〜6分程度におさめるのが聴衆に対する礼儀であるといえます。この中で説明と質疑応答を行うわけですから、ポスターセッションでは発表内容もさることながら時間配分が重要となります。
発表者によって多少の差異はあるものの、通常は説明と質疑応答のバランスは2対1ぐらいが普通です。また発表者の中には説明中に質疑を受ける人もいます。こういった時間の使い方は自分の発表スタイルなどをよく考えて、ある程度のプランを作っておくと本番で余計な心配をしなくて済みます。
これはポスターに限らないことですが、発表で伝えたいことを意識して発表内容をまとめることはとても重要です。作成されたポスターには研究についての全体像などが書かれていると思いますが、発表を行うときには。その中で特に伝えたいことは何であるかを強調する必要があります。
こうすることで聞いている側も発表を理解しやすく、またポスターをなぞるだけの単調な発表になりづらくなります。ポスター発表は質疑応答の敷居が低いので、伝えたいことを強調して不足した部分は質疑応答を使って補うぐらいの気持ちで臨んでもよいと思います。
繰り返しになりますが、ポスター発表は発表者と聞いている人の距離がとても近いです。そのため口頭発表に比べると聞いている人の目線が発表者に多く注がれることとなります。そんなとき、ポスターばかりを見て話していたら聞いている人としてはどうでしょうか?
塾講師のアルバイトや教育実習をしたことがある人はわかるかもしれませんが、聞いている人を見て話すのと、聞いている人を見ないで話すのとでは、話への引き込まれ方が大きく違います。なるべく聞いている人の方を見て話すことを心がけるだけで発表の雰囲気がとてもよくなるので、ぜひ試してみて下さい。
発表が楽になる、聴衆の目を引く、発表をわかりやすくするなど、ポスターセッションでの発表を効果的にするために準備しておくと良いものたちを紹介します。無理をして使う必要はありませんが、便利そうだと思ったら使うことを検討してみてください。
今までのVIP合宿のポスターセッションでは、実際にプログラムを動かすデモを使った発表はもちろん、研究している立体図形の模型などを提示している発表などもありました。ユーザがその場で操作できるタイプのデモでなくても、やはり実際の結果が見えると聴衆側としても研究の全体像や目的をイメージしやすくなります。
デモを上手に使うと「この研究、面白い!」と思わせることができますし、どの発表を聞きに行くか迷っている聴衆の興味を引くこともできます。
スライド形式での発表の時でも常識ではありますが、貰った質問やアドバイスを忘れないためにメモの準備をしておきましょう。いざ発表してアドバイスをもらう段階になって慌ててメモを探す、ということがないようにしたいところです。
また、大きめのふせんを持参し、聴衆から貰ったアドバイスをふせんに書いてポスターに貼っていくという形式を取る人もいます。
指し棒があると、ポスターを指す時もポスター全体が見えます。
用語の説明や概念図などポスターに載せるほどでない内容を入れておくためのものとして数枚準備しておくと発表がスムーズに進むことがあります。
また、先述しましたが、特に興味を持ってくれた人向けに説明したい資料なども準備しておくとより深いアドバイスがもらえるかもしれません。
一般の学会などでは結構持っている人がいます。こちらも自分の発表に興味を持ってくれた人の向け、または細かい数字の確認のためなどに持参しておくことをおすすめします。
ここまでポスター発表に際してのポイントを挙げてきましたが、発表者の努力だけで有意義なポスターセッションとなるわけでありません。聞き手が真剣に発表を聞き、その内容を理解し質問やアドバイス、議論をすることではじめて有意義なものとなります。
スライド形式での発表で全員の前で質問をすることはなかなか難しいかもしれませんが、ポスター発表でしたら気軽に質問をすることができます。簡単な質問であっても、自分の発表で理解しづらかった部分がわかることは発表者の今後の発表の際に生かされるかもしれませんので、質問する練習だと思ってぜひ積極的に質問をしてみてください。
筆者のおすすめは、一つの発表につき必ず一つは質問をしようと思って発表を聞くことです。実際に質問をするかは別として、質問しようという心構えで発表を聞くことで集中でき、研究の内容もよく理解できるようになります。
ポスターセッションは長時間となるため、聞き手となると疲れて集中力が切れがちですが、適度に飲み物を飲むなど一息入れつつお互いに有意義なものとなるように積極的に参加していただければ幸いです。
「ポスター発表 コツ」などと検索するだけでも、参考になりそうなホームページが見つけられるかと思います。以下に参考となるウェブサイトや書籍の一例を示します。